どうも、とある理系大学生のSeigaです。
学生実験で細菌細胞タンパク質の抽出とその濃度測定を行ったので、その内容を書きました。
大した中身でもないですし、まだまだ学識のない者が書いたものなので信用に足らないものなのですが、今文系大学生もしくは将来理系大学生になる方へ
理系の実験レポートってこんな感じなんだよっていうのを知っていただければ幸いです(*´ڡ`●)
実験レポートの出来は不問でお願いします(・_・;)
目次: Contents
B:細菌細胞内タンパク質の抽出とその濃度測定
[実験要約]
本実験では大腸菌細胞、枯草菌細胞からタンパク質の抽出と定量を行った。まず大腸菌、枯草菌をL培地で一晩培養しマイクロチューブにてそれぞれ集菌を行い、リン酸カリウム緩衝液で細胞を洗浄した。次に大腸菌は細胞膜が内膜と外膜の脂質二重膜構造と薄いペプチドグリカンでできていることから化学的要因には強いが物理的要因には弱いため超音波によって膜構造を破壊し、枯草菌は脂質一重膜と厚いペプチドグリカンでできていることから大腸菌とは逆に、物理的要因に強く化学的要因に弱いので多糖類を加水分解するリゾチームを添加することによって膜構造を破壊した。次に沈殿が入らないように上澄みを回収することによって析出したタンパク質を単離した。最後に波長280nmで吸光度を測る紫外吸光法と波長562nmで吸光度を測るBCA法でそれぞれの吸光度を測り、それぞれの検量線にプロットすることによって濃度を計算した。その結果含まれるタンパク質の質量は大腸菌より枯草菌の方が多いことがわかった。また測定方法の違いによってそれぞれのタンパク質の質量が異なり、大腸菌ではBCA法の方がタンパク質量は多く、枯草菌では紫外吸光法の方がタンパク質量は多かった。
[実験目的]
細胞は酵素によってその生理活性を維持し、 調節している。 酵素のほとんどはタンパク質であり、細胞内のタンパク質を調査することによってその細胞の持っている機能を調べることができる。 本実験では細菌細胞 (大腸菌および枯草菌) からのタンパク質抽出法とその中に含まれているタンパク質濃度の測定法の習得を目的とする。
細胞内のタンパク質を抽出するには細胞を破砕する必要がある。細苗細胞表層構造は大きく分けて2種類 (グラム陰性菌・グラム陽性菌) 存在している。 グラム陰性菌では2重の脂質層によって守られている。 このため、 ペプチドグリカン層は薄い。この細菌の特徴として、物理的破砕法には弱いが化学的破砕法には強い。これに対して、グラム陽性菌では脂質層は1層しかないが、ペプチドグリカン層は非常に頑丈である。このため、物理的破砕法には強いが、化学的破砕法に弱い傾向がある。そこで、細胞内タンパク質を抽出するにはその細菌の種類を把握して方法を選択する必要がある。
天然のタンパク質は通常20種類のL-アミノ酸から成るポリマーである。この組み合わせによって様々な機能を持つことができる。この20種類のアミノ酸のうち、トリプトファンとチロシンは280nm付近に吸収を持つため、一般的にタンパク質は280nm付近に極大吸収を持っている。
[実験材料・試薬]
・Escherichia coli HST02
・Bacillus subtilis 168
・ L培地 (30mlx2本、 シリコ栓、 オートクレープ) 三角フラスコ(300ml)で作製。
・50mM リン酸カリ ウム緩衝液 (pH8.0、 約100ml、 オートクレープ)
50mM リン酸水素2カリ ウム溶液と 50mM リン酸2水素カリ ウム溶液を混合してpHを調製した。
・リゾチーム溶液( 100mg/ml、1ml、冷蔵保存)
リン酸カリウム緩衝液に溶解する。
・BSA溶液(2.0 mg/ml、5m1程度、冷蔵保存)
血清アルプミン(FractionV)をリン酸カリウム緩衝液に溶解した。
・TaKaRa BCA protein Assay Kit (Takara社製)
Working、solution (BCA Reagent A : BCA Reagent B = 100:1 の比率で混合) を調製後 (調製済、 一度の測定に20m1程度必要)、 冷蔵保存。使用時に必要量を分注後、所定温度に調整してから使用した。
[使用機器]
・マイクロチュープ用冷却遠心分離器
・超音波発生装置
・顕微鏡
・プロックヒーター( 37℃マイクロチュープ用)
・恒温振盪槽(37℃ 培養用)
・吸光度計
[使用器具]
・シリコ栓付三角フラスコ(300ml) : 1本
・ビーカー(100ml) : 2個
・ビペットマン(P20、P200、P1000)
・チップ(各種)
・マイクロチュープ:多数・マイクロチュープスタンド: 1個
・試験管(φ1.6 x1.0)とアルミキャップ: 20組
・試験管スタンドコ個・クーラー: 1個
・油性マジック
・ビニールテープ
・はさみ
[実験操作]
前日
- 大腸菌および枯草菌細胞の培養(A実験の培養液を使用する) L培地に1白金耳植菌し、37℃で一晩震盪培養(100rpm)した。
1日目
-
試薬調製(A実験でも使用する100mg/ml リゾチウム溶液)
-
集菌
まず、培養液の濁度(A650)を吸光時計で測定した。1.5mlの培養液をマイクロチューブに回収し、遠心分離処理(12,000rpm、2min、4℃)した。上澄み液を、可能な限り、除去した。
-
洗浄
回収した細胞に、1mlの50mMリン酸カリウム緩衝液を加え、細胞を再懸濁する。遠心分離処理(12,000rpm、2min、4℃)で細胞と上澄み液に分離し、可能な限り、上澄み液を除去した。(ここまではA実験と同じ操作となる)
-
懸濁
回収した細胞を0.5mlの50mMリン酸カリウム緩衝液で懸濁し、細胞破砕処理を行った。
-
細胞破砕処理(大腸菌、グラスビーズ法)
回収した細胞試料と0.2g Acid washed glass beads(≦106μm)(SIGMA)ビーズを2.0mlの滅菌スクリューキャップチューブ(WATSON)に移し、Micro SmashTM MS-100R(TOMY社)で破砕処理した。(5,000rpm,4min、4℃)。
-
細胞破砕処理(枯草菌)
枯草菌(グラム陽性菌)の場合はペプチドグリカンを破壊する必要がある。これには一般的にリゾチームが用いられている。試料にリゾチーム(終濃度10mg/ml)になるように添加し、37℃で30分間保温した。保温後、氷中に保存した。
-
細胞内画分の回収
細胞破砕処理した試料を遠心分離処理(12,000rpm×5min、4℃)し、上澄み液と沈殿に分離した。上澄みを別のマイクロチューブに移し、氷中で保存した。この時、回収液量(ピペットマンで簡易測定)を記録しておいた。タンパク質試料は-80℃保存した。
2日目
-
試薬調製(0mg/ml BSA溶液)
-
タンパク質濃度の測定
紫外吸収(280nm)法とBCA法でタンパク質濃度を測定した。どちらも検量線の作成が必要であり、標準標品として試料と同じ緩衝液に溶解したBSA溶液(0、0.2、0.4、0.8、1.2、2.0mg/ml)を用いた。
(紫外吸収法)
(前もって適当に希釈した) 試料の280nmの吸光度(A280)を測定し、 その値からタンパク質濃度を算出した。 算出にあたって、標準標品のA280も測定した。 標準標品の吸光度は濃度に比例することが知られている。 最小二乗法を用いて検量線を数式化すると算出しやすい。
(BCA法)
この方法ではTaKaRa BCAProteinAssay Kitを使用した。
・37℃の1 mL working solutionに0.05 mlの (前もって適当に希釈した) 試料をよく混合した(マイクロチュープ)。
・37℃で30分間保温した。
・保温終了後、直ちに氷冷し、反応を停止 させた。
・室温に戻し、562nmの吸光度(A562)を測定した。
・標準標品についても同様の処理を行い、検量線を作成し(最小二乗法)、検量線から試料濃度を算出した。タンパク質濃度0mg/mlで測定したものをブランクとした。
(プラッドフォード法)く参考〉
この方法ではQuick Start Bradford protein Assay kitを使用する。
・1 x dye reagentを室温(25℃)まで暖める。
・マイクロチュープに0.02m1の(前もって適当に希釈した)試料を分注し、1m1のI×dyereagentを添加後、よく攪拌する。
・室温で最低5分間静置( 1時間以上は放置しない)
・595nmの吸光度(A595)を測定する
・標準標品についても同様の処理を行い、検量線を作成し(最小ニ乗法)、検量線から試料濃度を算出する。タンパク質濃度0mで測定したものをプランクとする。
[実験結果]
(1)溶液中のタンパク質濃度
紫外線吸収法
(僕たち2班は紫外吸収法、BCA法ともに測定する際に0点調節を行わずにやってしまい、またそのことに気づいたのは、松村先生が指摘された時で、再実験をして再び吸光度を図り直す期間がありませんでした。そのため、他の班(24)のデータを借りてレポートを書かせていただきました。
一応、僕たちの班のデータを載せておきます[表(0)]。)
表0:A562での大腸菌と枯草菌の吸光度
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
大腸菌 |
0.41 |
0.457 |
0.468 |
0.547 |
0.391 |
枯草菌 |
2.395 |
0.748 |
0.62 |
0.698 |
0.669 |
表1:標準標品のBSA濃度と吸光度(A280)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
濃度(mg/ml) |
0 |
0.2 |
0.4 |
0.8 |
1.2 |
2.0 |
吸光度 |
0 |
0.1273 |
0.2352 |
0.4449 |
0.6783 |
1.0925 |
試料のタンパク質濃度は、既知である標準標品のタンパク質濃度(BSA濃度)と 吸光度(A280)から求めた検量線の式に希釈した試料の吸光度を代入する。
さらに、濃度について方程式を解き、その解に希釈倍率(表2に示した)をかけると求まる。
図1より検量線の式は y=0.5383x+0.0204 である。したがってyに試料の吸光度を代入してxについて解き、それぞれの希釈倍率(大腸菌は6倍希釈、枯草菌4倍希釈)をかけて求める。求めたタンパク質濃度は下の表3に示した。
また、詳しくは(2)で行うが、紫外吸収法でのA650=1.0の培養液1ml当たりのタンパク質量(mg)についてそれぞれの値を表4に示した。
さらに、波長650nmにおける大腸菌と枯草菌のDNAの吸光度のそれぞれの値を表5に示した。
表2:試料の吸光度(A280)と回収量
|
|
1 |
2 |
3 |
4 |
大腸菌 |
6倍希釈 |
0.6072 |
0.6104 |
1.0354 |
1.0011 |
回収量(㎕) |
|
505 |
510 |
540 |
540 |
枯草菌 |
4倍希釈 |
0.4242 |
0.2413 |
0.2434 |
0.3696 |
回収量(㎕) |
|
520 |
500 |
550 |
620 |
表3:紫外吸収法での試料のタンパク質濃度(mg/ml)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
平均値 |
標準偏差 |
標準誤差 |
大腸菌 |
6.541 |
6.576 |
11.31 |
10.93 |
8.840 |
2.639 |
1.320 |
枯草菌 |
3.001 |
1.641 |
1.657 |
2.595 |
2.224 |
0.6838 |
0.3419 |
表4:紫外吸収法でのA650=1.0の培養液1ml当たりのタンパク質量(mg)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
平均値 |
標準偏差 |
標準誤差 |
大腸菌 |
2.5 |
2.5 |
4.6 |
4.5 |
3.5 |
1.2 |
0.59 |
枯草菌 |
1.1 |
0.59 |
0.66 |
1.2 |
0.88 |
0.31 |
0.15 |
表5:波長650nmにおける波長(A650)
大腸菌 |
0.8777 |
枯草菌 |
0.9253 |
BCA法
表6:標準標品のBSA濃度と吸光度(A562)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
濃度(mg/ml) |
0 |
0.2 |
0.4 |
0.8 |
1.2 |
2.0 |
吸光度 |
0 |
0.2781 |
0.4635 |
1.1245 |
1.5441 |
2.4509 |
図2:検量線(BCA法)
表7:試料の吸光度(A562)と回収量
|
|
1 |
2 |
3 |
4 |
大腸菌 |
2倍希釈 |
0.8691 |
0.3225 |
0.2169 |
0.2614 |
回収量(㎕) |
|
505 |
510 |
540 |
540 |
枯草菌 |
2倍希釈 |
0.6294 |
0.4399 |
0.3284 |
0.3834 |
回収量(㎕) |
|
520 |
500 |
550 |
620 |
タンパク質濃度は紫外吸収法と同様に、試料の吸光度(A562)を標準標品の検量線の式に代入して求める。
検量線の式は y=1.2222x+0.0478 であり、yに試料の吸光度を代入してxについて解き、その解に希釈倍率をかけて求めることができる。求めたタンパク質濃度を下の表8に示した。また、詳しくは(2)で行うが、紫外吸収法でのA650=1.0の培養液1ml当たりのタンパク質量(mg)についてそれぞれの値を表9に示した
表8:BCA法で求めた試料のタンパク質濃度(mg/ml)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
平均値 |
標準偏差 |
標準誤差 |
大腸菌 |
1.344 |
0.4495 |
0.2767 |
0.3495 |
0.6049 |
0.4978 |
0.2489 |
枯草菌 |
0.9517 |
0.6416 |
0.4592 |
0.5492 |
0.6504 |
0.2142 |
0.1071 |
表9:BCA法でのA650=1.0の培養液1ml当たりのタンパク質量(mg)
|
1 |
2 |
3 |
4 |
平均値 |
標準偏差 |
標準誤差 |
大腸菌 |
0.52 |
0.17 |
0.11 |
0.14 |
0.24 |
0.19 |
0.096 |
枯草菌 |
0.36 |
0.23 |
0.18 |
0.25 |
0.26 |
0.076 |
0.038 |
(2) A650=1.0の培養液1mlあたりのタンパク質質量
紫外吸収法
大腸菌のタンパク質質量は以下の式で求める。
(大腸菌のタンパク質濃度)×(回収量)×(大腸菌の吸光度(A650)へ換算)×(1.5mlから1.0ml へ換算)
したがって
8.840(mg/ml)×0.5238(ml)×1.0/0.8777×1.0(ml)/1.5(ml)=3.517(mg)
枯草菌のタンパク質質量は以下の式で求める。
(枯草菌のタンパク質濃度)×(回収量)×(枯草菌の吸光度(A650)へ換算)×(1.5mlから1.0mlへ換算)
したがって
2.224(mg/ml)×0.5475(ml)×1.0/0.9253×1.0(ml)/1.5(ml)=0.8773(mg)
BCA法
大腸菌と枯草菌のタンパク質質量も紫外吸収法と同様に求める。
(大腸菌のタンパク質質量)
6049(mg/ml)×0.5238(ml)×1.0/0.8777×1.0(ml)/1.5(ml)=0.2407(mg)
(枯草菌のタンパク質質量)
0.6504(mg/ml)×0.5475(ml)×1.0/0.9253×1.0(ml)/1.5(ml)=0.2566(mg)
[検討項目]
(1)細胞の破砕方法とその特徴
凍結融解法
[特徴]
凍結融解法は細菌や哺乳類細胞を溶解するのに通常用いられる。この方法では、ドライアイスや冷エタノール、または冷凍庫にて細胞浮遊を凍結させ、室温あるいは37℃で解凍する。凍結過程で細胞が膨張し氷晶が形成される。その氷晶が細胞を破壊することで解凍時に溶解される。十分に溶解するためには繰り返し行う必要があり、時間がかかります。しかしながら凍結融解により、細菌細胞質に存在する組み換えタンパク質を効率よく溶出出来ることが確認されている。そのため幾つかのプロトコルにおいては、哺乳類細胞の溶解に推奨される。
超音波処理
[特徴]
この方法はパルス状の超音波を用いて、細胞、細菌、胞子および細かくした組織を撹拌し溶解します。超音波を発するプローブを細胞懸濁液に浸し、超音波を発生させます。プローブからの機械的エネルギーにより、極小の気泡を発生・破裂させ、サンプルに繰り返し激しい衝撃を与え破砕します。処理中は熱が発生しやすいため、サンプルを氷中で冷却しながら短時間の処理を繰り返し行う事で、温度上昇を防ぎます。
添加剤・促進剤
[特徴]
破砕を効果的なものとする方法はいくつかあり、一つは低張液に細胞を浸すことです。低張液中では細胞は膨張するため、物理的破砕の効果は高くなります。また酵母および細菌細胞壁の多糖成分を分解するのにために、リゾチーム(200µg/mL)が用いられることがあります。細胞壁の破壊を促進するもう一つの方法として、ガラスビーズでの細胞表面の研磨が挙げられます。この方法は強度の高い酵母の破砕によく用いられます。また細胞を破砕すると溶液中に核酸物質が放出されるため、溶液の粘性は高くなります。この問題を軽減するために、RNase(50µg/mL)とDNase (25-50µg/mL)を添加します。超音波処理は染色体をせん断するため、ヌクレアーゼ処理は必要ありません。最後に、細胞を処理するとタンパク質が分解される可能性があります。これを防ぐために、プロテアーゼ阻害剤を全ての溶解中のサンプルに添加する必要があります。
(2)それぞれのタンパク質測定法の原理について
紫外吸光光度法
タンパク質を構成するアミノ酸の中で,チロシン,ト リプトファンおよびフェニルアラニンは,ベンゼン環な どの芳香族基を持つアミノ酸のため,280 nm 付近の紫外光を吸収する性質を持つ(図 1)。この性質を利用し て,280 nm におけるタンパク質の吸光度を測定することによってタンパク質濃度を定量するという方法である。核酸は,260 nmに極大吸収波長を持つと同時に280 nm にも 吸収帯があるため,少量の核酸の混入でも,タンパク質 の定量分析に大きな影響を与える。
BCA法
BCA法の原理は、アルカリ性条件下でペプチド結合がCu(II)をCu(I)に還元する反応(Biuret rxn.) と、Cu(I)とBCA (bicinchoninic acid)の錯体形成(に伴う紫色の着色)という二段階の反応に基づいています。第 一段階のBiuret反応でできるCu(I)とペプチドの錯体自体にも吸光はありますが、測定に使うには弱すぎます。 なので、二段階目のBCAとの錯体形成反応で562nmに吸収極大を持つより吸光度の高い錯体へと変換していま す。上で述べたように、SH基を持つDTTやβMEはBCAと相性が悪い訳ですが、その理由はこれらのSH基がCu へ強く配位する事が原因だと思われる。
(3)その他のタンパク質測定法について
Bradford 法
トリフェニルメタン系色素である Coomassie Brilliant Blue G250(CBB G250)を用いたタンパク質の定量 方法である。酸性条件下,CBB G250 をタンパ ク質溶液に添加すると,タンパク質中の塩基性アミノ酸 残基(アルギニン,リジン,ヒスチジン)および N 末 端アミノ酸と CBB G250 との間の静電的相互作用,お よび芳香族アミノ酸との間の疎水性相互作用によって, CBB G250 とタンパク質が非共有結合を介して結合す る。このとき,CBB G250 の極大吸収波長は 465 nm から 595 nm にシフトし,色調が赤紫色から青色に変化することから,595 nm における吸光度の変化を測定することによって,タンパク質を定量することができる。
WST 法
水溶性テトラゾリウム塩(WST8)を用いたタンパ ク質定量方法である(図 4)。WST8 は,タンパク質 中のアミノ酸(システイン,チロシン,トリプトファン) によって還元されると,ホルマザン体を生成する。生成 したホルマザン体は,アルカリ水溶液中で青色に呈色することから,ホルマザン体の極大吸収波長である 650 nm の吸光度を測定することによって,タンパク質を定量することができる。
Biuret 法
アミノ酸が三つ以上つながったトリペプチド以上のオ リゴペプチドまたはタンパク質と Cu(II)溶液をアルカ リ性条件下で混合すると,タンパク質またはペプチド鎖 中の窒素原子が Cu(II)に配位結合し,Cu(II)から Cu (I)に還元することによって,溶液の色が赤紫色に呈色 する。しかも,反応による呈色の程度は,タンパク質中のペプチド結合の数が多くなるほど強く呈色する。この現象を利用して,540 nm における吸光度を測 定し,あらかじめ作成した検量線を用いることによって,タンパク質濃度を算出することができる。
Lowry 法
上述の Biuret 法を改良し,検出感度の向上を目的と して開発された方法で,Biuret 試薬と,フェノール類 の検出を目的に開発された FolinCiocalteu 試薬(リンモリブデン酸とリンタングステン酸を酸性溶液に溶解したもの)を組み合わせたタンパク質の定量方法である。 原理としては,まずアルカリ性条件下,Biuret 試薬を タンパク質溶液に添加すると,Biuret 試薬中の Cu(II) とタンパク質を構成するペプチドが錯体を形成する。次 に,FolinCiocalteu 試薬を添加すると,タンパク質中 のトリプトファン,チロシン,システインによって,リ ンタングステン酸とリンモリブデン酸が還元され,試料 溶液が青色を呈し,650~750 nm 付近に光の吸収が生 じる。このときの吸光度を測定し,標準タンパク質で作 成した検量線と比較することによってタンパク質を定量することができる。
[実験考察]
紫外吸収法とBCA法でタンパク質質量に違いが出たワケ
検討項目でも書いた様に、紫外吸収法の原理として、波長280nmにおけるタンパク質中芳香族アミノ酸(チロシン、トリプトファン)の吸光度を測定することにある。
しかし、このことは逆に欠点として、同じ波長の領域に光吸収を持つタンパク質以外の物質の混入が,タンパク質の定量分析を妨害する。特に核酸は,260 nm に極大吸収波長を持つと同時に,280 nm にも 吸収帯があるため,少量の核酸の混入でも,タンパク質の定量分析に大きな影響を与える。本法のタンパク質の定量 範囲は 50~2000 ng/mL であるため,他の分析方法と比較して検出感度が低いこと,タンパク質の種類により吸光度が変動すること,紫外部に吸収を持つ物質の混入は,タンパク質の定量を妨害すること、これらのことが原因で紫外吸収法とBCA法でタンパク質質量に違いが出たと考えられる。
[参考文献]
総タンパク質の定量(鈴木 祥夫)
タンパク質定量(BCA法)
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