大学生が小学校で英語指導をするための文部科学省の情報まとめ

大学生で、小学校の英語指導員を目指されている方へ
文部科学省が発表した情報をまとめてみました!

こんな方に読んでほしい記事
  • 大学生で小学校の英語指導員を目指されている方

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目次: Contents

まず初めに:英語教育改革の背景

○ グローバル化の進展の中で、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって極めて重要である。アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべき。今後の英語教育改革においては、その基礎的・基本的な知識・技能とそれらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の育成は重要な課題。

○ 我が国の英語教育では、現行の学習指導要領を受けた進展も見られるが、特にコミュニケーション能力の育成について改善を加速化すべき課題も多い。東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年を見据え、小・中・高等学校を通じた新たな英語教育改革を順次実施できるよう検討を進める。並行して、これに向けた準備期間の取組や、先取りした改革を進める。

○ 本有識者会議は、文部科学省の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を受けて平成26年2月に設置され、小・中・高等学校を通じた英語教育改革について9回の審議を重ねており、これまでの議論を審議まとめとして整理した。

○ 今般の英語教育改革の背景として、社会における急速なグローバル化の進展という社会的な背景と、これまでの英語教育改革の進展や課題を踏まえた更なる取組の充実の2点が挙げられる。

グローバル化の進展の中での英語力の重要性

○ 社会の急速なグローバル化の進展の中で、英語力の一層の充実は我が国にとって極めて重要な問題。
 これからは、国民一人一人にとって、異文化理解や異文化コミュニケーションはますます重要になる。その際に、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって不可欠であり、アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべきである。今後の英語教育改革において、その基礎的・基本的な知識・技能とそれらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を育成することは、児童生徒の将来的な可能性の広がりのために欠かせない。
 もちろん、社会のグローバル化の進展への対応は、英語さえ習得すればよいということではない。我が国の歴史・文化等の教養とともに、思考力・判断力・表現力等を備えることにより、情報や考えなどを積極的に発信し、相手とのコミュケーションができなければならない。

○ 我が国では、人々が英語をはじめとする外国語を日常的に使用する機会は限られている。しかしながら、東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・多民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。

これまでの英語教育の改革を経た更なる改善

○ これまで英語教育では、幾多の議論を経て現行の学習指導要領が実施され、小・中・高等学校を通じて多くの取組と成果が見られるが、なお一層の充実が課題となっている。

○ これまでの成果と課題を踏まえながら、小・中・高等学校が連携し、一貫した英語教育の充実・強化のための改善が求められる。その際、英語を「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を活用して実際のコミュニケーションを行う言語活動を一層重視し、小・中・高等学校を通じて、授業で発音・語彙・文法等の間違いを恐れず、積極的に英語を使おうとする態度を育成することと、英語を用いてコミュニケーションを図る体験を積むことが必要である。

○ 英語教育の充実に当たり、「ことば」への関心を高める工夫によって更に外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという視点が重要である。

必要な改革について

改革1.国が示す教育目標・内容の改善

○ 学習指導要領では、小・中・高等学校を通して1.各学校段階の学びを円滑に接続させる、2.「英語を使って何ができるようになるか」という観点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を示す(資料参照)。(具体的な学習到達目標は各学校が設定する)。

○ 高等学校卒業時に、生涯にわたり4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指す。
 あわせて、生徒の英語力の目標を設定し、調査による把握・分析を行い、きめ細かな指導改善・充実、生徒の学習意欲の向上につなげる。これまでに設定されている英語力の目標(中学校卒業段階:英検3級程度以上、高等学校卒業段階:英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合50%)だけでなく、高校生の特性・進路等に応じて、高校卒業段階で、例えば英検2級から準1級、TOEFL iBT60点前後以上等を設定し、生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要。

  1. 小学校 :中学年から外国語活動を開始し、音声に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え、積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。そのため、学習に系統性を持たせるため教科として行うことが適当。小学校の外国語教育に係る授業時数や位置付けなどは、今後、教育課程全体の議論の中で更に専門的に検討。
  2. 中学校 :身近な話題についての理解や表現、簡単な情報交換ができるコミュニケーション能力を養う。文法訳読に偏ることなく、互いの考えや気持ちを英語で伝え合う学習を重視する。
  3. 高等学校:幅広い話題について、発表・討論・交渉など言語活動を豊富に体験し、情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を高める。

小・中・高等学校を通じた一貫した指標の設定

○ 各学校種での指導改善は進んでいるものの、学校間の接続(小・中連携、中・高連携)が十分とは言えず、進学後に、それまでの学習内容を発展的に生かすことができていない状況が多い。

○ そこで、2020(平成32)年度を見据え、新たな英語教育を実施していくため、小・中・高等学校を通じた英語教育の充実・強化を進める。
 国として、これまでの取組を検証しつつ、小・中・高等学校を通して各学校段階の学びを円滑に接続させるとともに、学校種ごとの教育目標を、技能ごとに「英語を使って何ができるようになるか」という視点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を示す(資料参照)。これにより、各学校が、具体的な学習到達目標を設定し、英語力に関する達成状況を明確に検証できるようにする(「詳細」を参照)。

○ 生徒の英語力の目標については、「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)において、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。この実現に向けて取り組むとともに、高等学校卒業時に、生涯にわたり「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指す。
 あわせて、生徒の英語力の目標を設定し、調査による把握・分析を行い、きめ細かな指導改善・充実、生徒の学習意欲の向上につなげる。これまでに設定されている英語力の目標から、高校生の特性・進路等に応じて、高等学校卒業段階で、例えば英検2級から準1級、TOEFL iBT60点前後以上等を設定し、生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要(「詳細」を参照)。

小学校における取組

○ 小学校では、コミュニケーション能力の素地を養うという観点で、外国語活動を通じた成果が出ている。

【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】
・小学生の7割が「英語が好き」「英語の授業が好き」と回答。
・中学生の8割が「小学校の英語の授業(簡単な英会話)が役に立った」と回答。
・多くの中学校教員が「小学校の外国語活動導入前と比べて、生徒による英語の「聞く力」「話す力」が向上した」と回答。 

○ 一方、小学校の高学年では、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じている状況が見られるとともに、中学校1年生の8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、中学校において音声から文字への移行が円滑に行われていない場合が見られる。

【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】
・中学生の8割が「小学校の英語の授業で英単語を「読む」「書く」機会が欲しかった」と回答。

【小学校の事例】
・低学年から外国語活動に取り組む小学校約3,000校(全体の約15%)における取組状況を見ると、小学校高学年で学習意欲が低下する傾向が見られる例もある。その場合、高学年で「読むこと」「書くこと」も含めて系統的に指導する教科型の外国語教育を導入することで、児童の外国語の表現力・理解力が深まり、学習意欲の向上が認められている。 

○ 小学校では、これまでの実践を踏まえながら、中学年から「外国語活動」を開始し、音声に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。高学年では身近なことについて基本的な表現によって「聞く」「話す」に加え、積極的に「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養う。そのため、学習の系統性を持たせる観点から、教科として外国語教育を行うことが適当である。

  • 小学校中学年への外国語活動の導入は、英語学習に対する動機付けや、聞き取り、発音の向上に効果があると考えられる。また音声を中心に体験的に理解を深めることは、高学年よりも、小学校中学年の児童の発達段階により適していると考えられる。
  • 小学校高学年では、現在、中学校で学ばれている内容を単に前倒しするのではなく、小学校の発達段階に応じて、積極的に英語を読もうとしたり書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な英語の運用能力を養う指導が考えられる。

○ 平成25年12月に文部科学省で取りまとめた「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、小学校中学年に活動型を導入し、コミュニケーション能力の素地を養うため、週1~2コマ程度とすることが示されている。
 また、高学年では教科型とし、コミュニケーション能力の基礎を養うことを目標に、初歩的な英語の運用能力を身に付けるために必要な一定時間(年間70単位時間、週2コマ相当)を確保し、モジュール学習(※)も活用しながら、週3コマ程度を確保することが示されている。
 (※モジュール学習とは、10分、15分などの時間を単位として取り組む学習形態。)

○ 一方、授業時数については、小学校の標準授業時数や、モジュール学習等の状況を踏まえたより詳細な検討が必要との指摘もあった(「詳細」を参照) 。
 こうした意見も踏まえ、小学校における外国語教育に係る授業時数や位置付けなどについては、次期の学習指導要領改訂に向けての審議において、教育課程全体の中で更に専門的に検討することが必要である。

○ 小学校では、英語に限らず、世界に数多くの言語があることを理解させることも重要である。

小学校における評価の取扱い

○ 小学校において、中学年では、外国語学習の初期段階であり、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点を置いて、発達段階を踏まえた具体的な学習評価の在り方を検討する必要がある。
 高学年では、教科として位置付けるに当たり、英語の特性と高学年の発達段階を踏まえながら、文章記述による評価や数値等による評価など、適切な評価方法については先進的取組を検証し、引き続き検討する。

○ また、小学校高学年での評価に当たっては、外国語学習の初期段階であることを踏まえ、語彙や文法等の知識の量ではなく、パフォーマンス評価等を通して、

  • 言語や文化に関する気付き、
  • コミュニケーションへの関心・意欲、
  • 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、
  • 「聞くこと」「話すこと」などの技能、

を評価することも考えられる。その際、学習者に過度の負担とならないように配慮しなければならない。

○ なお、中学校における入学者選抜に外国語を課すことは望ましくないとの指摘があった。今後、小学校における外国語学習の趣旨を踏まえ、学習者に過度の負担とならないように十分に配慮して検討することが必要である。このことは、小学校と中学校の接続の在り方を検討する際にも極めて重要である。

(※パフォーマンス評価とは、知識やスキルを使いこなす(活用・応用・総合する)ことを求めるような評価方法(問題や課題)であり、様々な学習活動の部分的な評価や実技の評価をするという複雑なものまでを含んでいる。また、筆記と実演を組み合わせたプロジェクトを通じて評価を行うことを指す場合もある。 (出典:文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理-平成26年3月31日:42ページ) )

教科書・教材の充実

○ 小学校高学年で教科化する場合、学習効果の高いICT活用も含め必要な教材等を開発・検証・活用する。                             

○ 教科書を通じて、説明・発表・討論等の言語活動により、思考力・判断力・表現力等が一層育成されるよう教科用図書検定基準の見直しに取り組む。

○ 国において音声や映像を含めた「デジタル教科書・教材」の導入に向けて検討を進める。

○ ICT予算に係る地方財政措置を積極的に活用し、学校の英語授業におけるICT環境を整備。 

教科書の改善

○ 小学校中学年では、発達段階に応じた外国語活動に必要な教材を開発する。小学校高学年では、教科化に伴って、教科書の整備が必要となるが、教科書が整備されるまでの間、国において、新たな教材を開発・検証・配布する必要がある。
 小学校の高学年では、中学年での外国語活動を継承し、また、中学校での学習への円滑な接続を踏まえながら、アルファベット文字の認識、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、語順等への気付きを促す指導に有効な教科書等の教材が必要である。

○ 現在の中・高等学校の教科書には、文法事項を中心とした言語材料の定着を図る様々な活動に分量の多くがとられているため、言語材料を活用しながら、説明・発表・討論を通じて、思考力・判断力・表現力等を育成するような言語活動の展開が十分に意識されていないものも見られる。教科書等の作成・活用に当たり、次期学習指導要領の改訂において、そのような趣旨をより徹底するとともに、教科用図書検定基準の見直しに取り組むことが適当である。

ICTの活用

○ 先進的な取組を行う学校では、タブレット、PC、電子黒板、テレビ会議システム等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流において、意見交換・発表等の互いを高め合う学びを通じて、思考力・判断力・表現力等を育成する取組が行われている。

○ ICTを効果的に活用することによって教育上の効果が期待される。そのため、今後、国において「デジタル教科書・教材」の導入に向けて検討を進める。また、デジタル教科書・教材が導入される際には、教科用図書検定の対象となる教科書には音声や映像データが含まれるという考え方を明確にする。

○ 公立学校におけるICTの環境整備と活用は、一部の学校・地域では進んでいるが、全国的には十分とは言えず、ICTの環境整備の充実を一層促す必要がある。
 教育の情報化の推進については、「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)で目標とされている水準の達成に必要な所要額(平成26年度から4か年にわたり総額6,712億円)を計上した「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」に基づき、地方交付税措置を講じることとしている。地方交付税の使途を国が制限することはできないが、ICT環境の整備は、英語教育への積極的な活用という観点からも重要であり、各地方公共団体において、国の計画を踏まえた積極的な予算措置が図られることが期待される。

学校における指導体制の充実

○ 小学校の中学年では、主に学級担任がALT等とのティーム・ティーチングも活用しながら指導し、高学年では、学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する、併せて専科指導を行う教員を活用することによる指導体制を構築。2019(平成31)年度までに、すべての小学校でALTを確保できる条件を整備。小学校教員が自信を持って専科指導に当たることが可能となるよう、「免許法認定講習」開設支援等による中学校英語免許状取得を促進。

○ 教職課程において英語力・英語指導力を充実する観点から改善。今後、教員養成の全体の議論の中で検討が必要。

○ 現職教員への研修は、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携体制を構築し、継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげ改善・充実。 

指導体制の強化

○ 各地域の大学や外部専門機関との連携による研修等の実施や、各地域の指導的立場にある教員が英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで指導に当たるなど、地域全体の指導体制を強化する必要がある。  
 また、各地域の中心となる「英語教育推進リーダー」等の養成とともに、そうした者が各地域における研修の企画・運営に参加することが可能となるような定数措置や外部専門人材の活用を充実することが必要である。

○ 各学校では、校長のリーダーシップの下で、英語教育の学校全体の取組方針を明確にし、中核教員等を中心とした指導体制の強化に取り組むことが重要である。

○ 小学校では、現行の学習指導要領において、

  • 指導計画の作成と授業は、学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行い、
  • 授業の実施に際しては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに地域の実態に応じて外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなどにより、

指導体制を充実することとされている。
 平成23年度に小学校高学年に外国語活動が導入されて以降、多くの学校で学級担任と外国語指導助手(ALT)を始め、英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングによる指導体制が整備・充実が図られてきた。
 一方、授業準備等の時間確保、教員の指導力、小・中学校の連携の具体的な工夫が課題として指摘されている。

【文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」】
・小学校では、学校の状況が「十分でない」又は「どちらかといえば十分でない」項目として、「準備等の時間確保」、「教員の指導力」、「小・中の連携」等を挙げる教員が多い(それぞれ80%、58%、74%)。 

教員養成と研修

○ 多くの現職教員が、自分が受けてきた英語教育とは大きく異なる方法で指導や評価を行うことが求められ、そのことに対応できる教員を養成するための研修が課題となっている。

○ 小学校の教職課程では、児童に英語を指導するのに必要な英語コミュニケーション能力を身に付ける授業や英語指導法に関する授業の履修が行われるようにするための方策を検討する。また、養成段階において、基本的な英語音声学、実際の場面で使うことができる語彙・表現、文構造、文法に関する理解と運用、異文化理解、発達段階に応じた適切な指導法、教材開発、小学校における教室運営など今まで以上に実践的な内容を取り扱うべきである。
 また、小・中連携に対応した実習・事例研究、実践的なティーム・ティーチング等の模擬授業が開設されることが必要である(「詳細」を参照)。

英語教育の在り方に関する有識者会議における審議の詳細

英語教育改革の背景

(1)経緯

○ グローバル化が進展する中で求められる人材育成に対応するため、小・中・高等学校を通じた英語教育においては、教育課程の改善・充実が図られてきた。
 また、政府の提言等(※1)においては、英語担当教員の英語力・指導力の強化や、生徒が英語を使う機会を増やすために必要な指導体制の強化に関する方向性が打ち出された。

(※1 「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(平成15年3月)、「国際共通語としての英語力向上のための五つの提言と具体的施策」(平成23年6月)において今後の英語教育の方向性が提言された。)

○ これらを踏まえ、国による研修支援や先進的な取組への支援を行うとともに、教育委員会や学校においては、教員及び生徒の英語力などの目標を設定し、研修の充実や外国語指導助手の配置などに取り組んできた。一方で、教員の指導力・内容、教科書・教材、指導体制に関する多くの課題が指摘されている。

○ このような中で、第2次安倍内閣に設置された教育再生実行会議では、平成25年5月の第3次提言(「これからの大学教育等の在り方について」)において、グローバル化に対応した小学校英語学習の早期化、教科化を含めた初等中等教育段階からの英語教育の抜本的拡充について検討が求められ、同月閣議決定された第2期教育振興基本計画にも明記された。

○ また、教育再生実行会議では、平成26年7月の第5次提言(「今後の学制等の在り方について」)において、英語などの教科指導の専門性に応じた教育の充実、小学校と中学校の連携による英語教育の抜本的充実の在り方、教員養成の在り方等を検討する必要性が指摘された。

○ 文部科学省より、平成25年12月13日に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が公表され、同計画において示された方向性について、その具体化に向けて専門的な見地から検討を行うため、平成26年2月に「英語教育の在り方に関する有識者会議」が設置され、小・中・高等学校を通じた英語教育改革について、これまで9回の審議を重ねており、そこで交わされた議論について審議のまとめとして整理した。

○ 同有識者会議の下に、「英語力の評価及び入試における外部試験の活用に関する小委員会」及び「指導体制の在り方に関する小委員会」が設置され、次期学習指導要領の改訂も視野に入れた新たな英語教育の目標・内容などの議論に沿って、これまでの取組の現状と課題を踏まえながら、専門的・技術的な議論を行った。

○ なお、審議している内容は、英語教育の改善・充実のため直ちに取り組む必要がある内容のほか多岐にわたるが、このうち教育課程に関わる事項については、次期改訂に向けた教育課程全体の見直しの中で、また、教員養成に関わる事項については、教員養成に関する全体の議論の中で更に検討が行われ、必要な取組を進めることが期待される。

(2)英語教育改革の背景

(グローバル化の進展の中での英語力の重要性)
○ グローバル化が急速に進展する中で、子供たちの将来の職業的・社会的な環境を考えると、外国語、特に英語によるコミュニケーション能力は、これまでのように一部の業種や職種だけでなく、生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され、グローバル人材育成(※2)において今まで以上にその能力の向上が課題となっている。

(※2 平成25年6月に閣議決定された教育振興基本計画においては、グローバル化が加速する中で、日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材の育成が重要であるとの指摘がなされ、国際共通語である英語力の向上などが求められている。)

○ これからは、異文化理解や異文化コミュニケーションはますます重要になる。その際に、国際共通語としての英語力の向上は日本の将来にとって不可欠であり、アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべきである。今後の英語教育改革においては、一定の基礎的な知識・技能とそれらを活用して主体的に課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等を育成することは、児童生徒の将来の可能性の広がりのために欠かせない。
 もちろん、社会のグローバル化の進展への対応は、英語さえ習得すればよいということではない。日本人としての歴史・文化等の教養とともに、思考力・判断力・表現力等を備えることにより、自ら情報や考えなどを発信し、相手とのコミュケーションができなければならない。

○ 我が国では、現状の日常生活においては、人々が英語をはじめとする外国語を使用する機会は限られている。しかしながら、東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020(平成32)年はもとより、現在、学校教育で学ぶ児童生徒が卒業後に社会で活躍するであろう2050(平成62)年頃には、我が国は、多文化・多言語・多民族の人たちが、協調と競争する国際的な環境の中にあることが予想され、そうした中で、国民一人一人が、様々な社会的・職業的な場面において、外国語を用いたコミュニケーションを行う機会が格段に増えることが想定される。母語教育に加え、外国語教育の重要性が一層高まるのである。

○ 外国語教育に当たり、母語に関する教育との連携を通じて、「ことば」への関心を高める工夫が重要であるとの指摘があった。

○ 外国語には英語以外にも様々な言語が存在し、コミュニケーションの手段という意味ではそれぞれ重要ではあるが、グローバル化社会において英語が国際共通言語として重要な役割を果たしていることから、英語教育改革を一層推進するための提言をとりまとめることとする。

(これまでの英語教育の改革を経た更なる改善)
○ これまで英語教育では、幾多の議論を経て現行の学習指導要領が実施され、小・中・高等学校を通じて、多くの特色ある取組と成果が見られるようになってきているが、なお一層の充実が課題となっている。

○ 現行の学習指導要領は、発達の段階に応じて言語や文化についての理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、4技能を総合的に育成することにより、コミュニケーション能力を育成することを重視している。また、児童生徒が生涯にわたり英語を学習する基盤が培われるよう、基礎的・基本的な知識・技能の習得とともに、思考力・判断力・表現力等を育むために、発表や討論など知識・技能の活用を図る学習活動を発達段階に応じて充実させてきた(※3)。

(※3 学校教育法第30条2項(抜粋)においては、「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。」と規定された。同規定について、中・高等学校も準用。)

○ 前述のような課題が指摘される現状を踏まえ、コミュニケーション能力の育成を意識した効果的な教育が行われるようにする。このため、これまでの英語教育の成果・課題や、英語を外国語として学ぶ諸国における取組状況とその背景などを改めて踏まえた目標・内容などの改善・充実が必要である。

○ このような観点から、更なる英語教育の充実を図るため、小学校中学年における外国語活動の導入、高学年における教科としての教育課程上の位置付けや、中・高等学校における言語活動の高度化に向けた検討を、より専門的な視点から行い、学習指導要領の改訂に向けた検討に生かすことが必要である。

○ その際、英語教育を通じて育成すべき資質・能力とともに、これらを育成するために必要な小・中・高等学校を通じた一貫した目標・内容と学習評価の在り方について一体的に見直しを行うことも検討する必要がある。「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から、より構造的で明確なものとし、効果的なコミュニケーション能力の育成を意識した取組を促進することが必要である(※4)。

(※4 「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理-」(平成26年3月)において、「今後、学習指導要領の構造を、1.児童生徒に育成すべき資質・能力を明確化した上で、2.そのために各教科等でどのような教育目標・内容を扱うべきか、3.また、資質・能力の育成の状況を適切に把握し、指導の改善を図るための学習評価はどうあるべきかといった観点から見直す必要がある。」との指摘がなされている。)

○ これまでの成果と課題を踏まえながら、小・中・高等学校が連携し、一貫した英語教育の充実・強化のための改善が求められる。その際、英語の4技能を活用してコミュニケーションを行う言語活動を一層重視し、小・中・高等学校を通じて、日常の教育活動においては、発音や文法等の間違いを恐れず、積極的に英語でコミュニケーションを図ろうとする態度を育成する必要がある。

○ 教科等を横断して、児童生徒の思考力、判断力、表現力等を育むため、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力を育成できるよう、更に言語活動を充実することが必要である。
 英語教育のみならず外国語教育の充実に当たっては、学習者が、言葉の性質・仕組み・働きを理解することにより、「ことば」に対する気付きを深め、更に外国語の効果的運用に必要な能力を伸ばすという観点が重要である。

○ これらの取組と併せて、国際社会に生きる日本人として、日本人のアイデンティティを育成するため、我が国の歴史・伝統文化等に関する学習の一層の充実が必要である。

○ 以上のような背景を踏まえ、今後の英語教育に必要な教員の英語力・指導力向上のための改善・充実を図るために必要な1.指導・内容、2.教科書・教材、3.指導体制、4.今後の英語教育に必要な教員の養成・採用・研修の在り方、及び5.英語教育における外部人材の確保などに関する今後の方向性について検討を行った。

国が示す教育目標・内容の改善

(1)現状と成果 

(現行の学習指導要領)
○ 小・中・高等学校を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、4技能を総合的に育成することをねらいとしている。

○ このねらいを実現するため、学習指導要領に、

  • 平成23年度より小学校5、6年生において、コミュニケーションの能力の素地の育成をねらいとして、外国語活動を週1コマ実施すること
  • 中学校では授業時数を週3コマから週4コマ(約3割増:105時間⇒140時間)へ充実し言語活動を各領域で1項目追加するなど充実を図るとともに、従来の「聞く」「話す」を重視した指導から4技能のバランスが取れた指導への改善を図り、教材の題材には日常生活、風俗習慣、物語、地理、歴史、伝統文化や自然科学などから、生徒の発達段階、興味関心に即して適切な題材を取り上げること
  • 高等学校では選択必履修から「コミュニケーション英語1」の共通必履修に変更するなど科目構成を変更し、生徒が英語に触れる機会を充実するとともに、授業を実際のコミュニケーションの場面とするため、授業は英語で行うことを基本とし、その際、生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮すること

を明示した。
 また、指導語彙を充実するため、高等学校で「コミュニケーション英語1」、「コミュニケーション英語2」及び「コミュニケーション英語3」をすべて履修した場合、高等学校で1,800語程度、中・高等学校を通じて3,000語程度を指導することとした。

(生徒の英語力の目標設定)
○ これまでの政府の提言(※5)において、学習指導要領を踏まえ、各学校段階で求められる英語力の達成目標を設定し、英語の指導改善や生徒の英語学習のモチベーション向上などに取り組み、接続する学校間が連携しながら、それぞれの段階で求められる英語力を着実に身に付ける指導を推進してきた。

(※5 「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」(平成15年3月)では、国民全体に求められる英語力として、「中学校・高等学校を卒業したら英語でコミュニケーションができる」ようにすると同時に、職業や研究になどの仕事上英語を必要とする者には、基礎的な英語力を踏まえつつ、それぞれの分野において必要な英語力を身に付けるようにし、日本人全体として、英検、TOEFL、TOEIC等の客観的指標に基づいて世界平均水準の英語力を目指すことが指摘された。併せて中学校卒業時には卒業者の平均が英検3級程度、高等学校卒業段階では、卒業者の平均が英検準2級~2級程度)を目指す目標が提示された。)

○ これらの生徒の英語力の目標については、「第2期教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)において、英語教育の成果指標として、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。

(小学校の成果)
○ 小学校では、コミュニケーション能力の素地を育成するという観点で、外国語活動を通じた学習の成果が見られる。
 小学生の76%が「英語の学習が好き」、また91.5%が「英語が使えるようになりたい」と回答(※6)するとともに、中学校1年生の生徒の約8割が小学校外国語活動で行ったことが、中学校外国語科で役立っていると回答。
 また、外国語活動導入前と比べて、中学校1年生の生徒に「成果や変容がとてもみられた」「まあまあみられた」と感じる英語担当教員の割合は78%となっており、英語の基本的な表現に慣れ親しんでいる、英語を使って積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育成されている、英語で活動を行うことに慣れているといった指摘がなされている。
 さらに、外国人と臆することなくコミュニケーションを図ろうとする態度の育成や、小学校で外国語活動を経験した中学生の聞く力や話す力が高まったという指摘もある。

(※6 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」)

○ 先進的な事例においては、小学校低学年、中学年から外国語活動を取り入れるとともに、中学校とのカリキュラム上の接続を意識した取組などが行われており、生徒の英語学習に対する意欲が中学校以降も維持され、英語力が向上している状況が見られる。

(2)課題

(小学校の課題)
○ 外国語活動への取組が充実してきたものの、地域や学校、教員によりその取組に差があるという指摘がある。また、外国語指導助手(以下、「ALT」という。)の労務管理上、学級担任等とALTとがティーム・ティーチングができない状況もあり、ALTに指導を任せてしまうという状況も指摘されている。

○ 小学校高学年は、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じている状況が見られるとともに、中学校1年生の生徒の7割以上が小学校で「英語の単語・英語の文を読むこと」、8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、中学校において音声から文字への移行が円滑に行われていない場合が見られる。

○ 先進的な事例では、小学校低学年、中学年から高学年まで外国語活動に取り組む学校があるが、これらの中には高学年で学習意欲が低下する傾向が見られる例もある。そのような課題に対応して、高学年に「読むこと」及び「書くこと」を系統的に指導する教科型の外国語教育を導入した例では、児童の外国語の表現力、理解力が深まるとともに学習意欲の向上が認められる取組もある。

○ このように、外国語活動は、児童が自らの考えを英語で表現するための十分な語彙や表現を身に付けることは意図されていないが、先進的な事例の中では、中学年よりコミュニケーションに積極的に関わろうとする態度が育成され、高学年においてコミュニケーションの基礎を養う活動が行われている。今後、小学校中学年から学習を開始し、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うことで、小学校卒業時までに慣れ親しみや体験的理解に加えてコミュニケーション能力の基礎を身に付けさせることも期待される。

○ 小・中連携の観点からは、小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校においては外国語活動を踏まえた指導が不十分である。

○ 小・小連携、小・中連携の研修では、「学級担任等による外国語活動の参加・協議」や「外国語活動の在り方に関する共通理解、具体的な活動についての共通理解や体験」などに関する研修を4~5割程度の学校で実施している。一方、年間指導計画や単元計画指導案の作成、検討などを実施している学校は全体の1~2割弱となっている(※7)。

(※7 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」)

(3)改善の方向

小・中・高等学校共通の事項

○ 小・中・高等学校を一貫して外国語の「コミュニケーション能力」を養うため、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」及び「書くこと」のバランス良い4技能の育成を踏まえつつ、各学校段階における発達段階に応じた育成すべき資質・能力を育む観点から、教育目標・内容の明確化や、目標・内容に沿った指導方法の見直し、学習評価の改善等を一体的に図るという方向で検討する。

○ また、これまでの英語教育の成果と課題を踏まえ、各学校が適切に学習到達目標を設定し、これらの資質・能力についての達成状況を明確化できるようにするため、国として、小・中・高等学校において達成を目指すべき教育目標を、より具体的な形で4技能ごとに一貫した指標として示す方向で検討する。その際、各学校における学習到達目標の設定、及び評価の取組による成果・課題を踏まえ、「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」などについては、観察等による定性的な評価が適切に行われることが必要なものと、「○○ができるようにする。」と設定することがより効果的な目標設定の在り方について、引き続き検討を行う。

○ 小・中・高等学校の連携、中・高等学校の連携などを意識した目標・内容を具体的に検討するとともに、中・高等学校の目標の高度化等の改善を踏まえ、それぞれの段階において言語の使用場面や働きを更に広げた言語活動を行うこととする。

○ 学校における学習が、生涯にわたって、自ら外国語を学び、実際にコミュニケーションで使おうとする動機付けに結びつけ、維持するようにする。

(小・中・高等学校一貫した指標の形での教育目標の設定)
○ 現在、各中・高等学校において策定されている学習到達目標は、学習指導要領に基づき、「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から目標を具体化し、それらに基づく指導及び評価を行うことにより、英語によるコミュニケーション能力を確実に養うことを目的としている。これらは各学校において生徒の学習状況や地域の実態等を踏まえた上で設定することを通じ、生徒が身に付ける能力を明確化し、教育活動を行う際に、具体的な指導及び評価の改善に活用するものである。

○ 小・中・高等学校を通じて体系的な教育活動を行うとともに、各学校における学習到達目標を設定した指導等の改善を更に進める観点から、今後、国において、これまでの取組を検証しつつ、小・中・高等学校において達成を目指すべき教育目標を、4技能ごとに一貫した指標の形で設定することについて検討を進める。このため、次期学習指導要領の改訂に向けた教育目標の見直しに資するよう、現行学習指導要領を基にした具体的な4技能ごとの一貫した教育目標を試行的に作成し、研究開発学校等における取組を促すとともに検証を行う(小・中・高等学校を一貫した教育目標・内容等のイメージは別添参照)。

(学習到達目標を設定する効果)
○ 具体的な学習到達目標は、学習指導要領の教育目標等に基づき、各学校において、それぞれの実情に応じて作成することが想定される。
 その場合の効果として、以下を挙げることができる。

  1. 学習到達目標を設定することで、児童生徒にどのような英語力が身に付くか、英語を用いて何ができるようになるか、あらかじめ明らかにすることができる。また、そうした情報を児童生徒や保護者と共有することで授業のねらいが明確になるとともに、児童生徒への適切な指導を行うことができる。
  2. 特に、学習指導要領に基づいて学習到達目標を設定し、指導と評価を設定する際に、文法や語彙等の知識の習得にとどまらず、それらの知識を活用してコミュニケーションが図れるよう、4技能の総合的な能力の習得を重視することが期待される。
  3. 校内でも教員により指導方法が大きく異なることがある中で、学習到達目標の策定を通じて、教員間で、指導に当たっての共通理解を図り、均質的な指導を行うことができる。
  4. 評価が、面接・スピーチ・エッセイ等のパフォーマンス評価などによって「言語を用いて何ができるか」という観点からなされることが期待され、更なる指導と評価の一体化とそれらの改善につなげることができる。

○ 一方で、学校における学習到達目標の作成に当たっては、以下の留意点が挙げられている。国や教育委員会は、そうした活動が円滑かつ効果的に進むよう支援していくことが必要となる。

  1. 学習到達目標に掲げられた内容を形式的に達成すればよいのではなく、授業を通じて教員が児童生徒の状況を把握しながら、英語力の向上を支援していくことが必要である。
  2. 学習到達目標を作成すること自体が目的となってしまわないように、研修等を通じて、教員の共通理解を図ることが求められる。
  3. 小・中・高等学校を通じた学習到達目標の設定に当たっては、早期の段階から高度な水準を求めることがないよう計画し、児童生徒の学習意欲を維持・向上させるような配慮が必要である。
  4. 学習到達目標が設定されていく中で、それらと入学者選抜や資格・検定との関わりがどうなっていくか検討する必要がある。

○ 各学校においては、学習指導要領の内容に基づき、生徒に求められる英語力を達成するための具体的な学習到達目標をCAN-DO形式を含めた形で設定する。その際、教科書・教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、学校及び各科目の単元ごとの学習到達目標を具体的に設定し、指導方法や評価方法の工夫・改善を図る。

(生徒の英語力の目標設定)
○ 「教育振興基本計画」(平成25年6月14日閣議決定)(※9)において掲げられている目標の実現に向けて取り組むとともに、高等学校卒業時に、生涯にわたり「聞く」「話す」「読む」「書く」4技能を積極的に使えるようになる英語力を身に付けることを目指すことが重要である。
 あわせて、生徒の英語力の目標を設定し、調査による把握・分析を行い、きめ細かな指導改善・充実、生徒の学習意欲の向上につなげることが必要である。
 また、これまでに設定されている英語力の目標だけでなく、高校生の特性や、留学も含めた進路等に応じて、高等学校卒業段階で、英検2級から準1級、TOEFL iBT60点前後以上などのスコアを、4技能を測定する客観的な目標として設定し、生徒の多様な英語力の把握・分析・改善を行うことが必要である。

(※9 同閣議決定において、中学校卒業段階で英検3級程度以上、高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上を達成した中高生の割合を50%とすることとされている。)

○ なお、平成25年12月に文部科学省で取りまとめた「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、今後の新たな方向性として、最終的に高等学校卒業段階における目標にCEFR (※10)B1~B2程度(英検2~準1級、TOEFL iBT60点前後以上等)が示されている。このような目標を掲げる場合、学校教育だけで全ての生徒が達成する目標として設定するのは難しく、学校外で英語に触れる機会、様々な学習の場や支援を得ながら高等学校卒業段階における英語力の目標として設定することに留意すべきとの指摘があった。
 また、CEFRのレベルと資格・検定試験の目標設定は、現段階では検証が十分できていないので難しいとの指摘があった。

(※10 CEFR(Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment「外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠」)は、語学シラバスやカリキュラムの手引きの作成、学習指導教材の編集、外国語運用能力の評価のために、包括的な基盤を提供するものとして、20年以上にわたる研究を経て2001年に欧州評議会が発表。)

○ CEFRを日本の英語教育の中でどのような位置付けをするかということについては、更にどのような評価を行い、位置付けるのかについて体系的な議論が必要であるとの指摘があった。

○ 生徒の学習意欲を高めながら英語力の向上を図るため、各学校における取組も踏まえつつ、グローバル化に対応した世界標準の英語力育成を目指すことが必要との指摘もあった。

小学校における改善の方向

○ これまでの成果・課題を踏まえ、今後の小学校中学年における外国語活動の導入と、高学年でのより系統性を持たせた体系的な指導を想定し、次のような目標・内容の改善を図る。
 その際、英語だけに限らず、世界には多くの言語があることや、国語教育との連携も通じて、言語に対する興味・関心を高めることが重要である。

(小学校中学年)
○ 小学校中学年における外国語活動を導入する場合、これまでの先進的な取組の成果・課題を踏まえ、

  • 例えば、英語学習に対するモチベーションや、聞き取り、発音に関して効果があると考えられること、また音声を中心に体験的に理解を深めることは、小学校中学年の児童の発達段階により適していると考えられる。
  • このため、中学年では、言語や文化についての体験的理解や、外国語の音声等への慣れ親しみ、コミュニケーションへの積極性を中心とする「外国語活動」(活動型)を行い、コミュニケーション能力の素地を養うこととする。

(小学校高学年)
○ 小学校高学年において、これまでの先進的な取組の成果・課題を踏まえ、

  • 高学年においては、中学年から中学校への学びの連続性を持たせながら、4技能を扱う言語活動を通して、より系統性を持たせた指導(教科型)を行う。このため、外国語の基本的な表現に関わって聞くことや話すことなどのコミュニケーション能力の基礎を養うこととする。そのため、より系統性を持たせた体系的な指導を行う教科として位置付け更に専門的に検討すべき。
  • その際、単に中学校で学ぶ内容を小学校高学年に前倒しするのではなく、学校内外の影響を踏まえながら、小学校の発達段階に応じた「読むこと」、「書くこと」に慣れ親しみ積極的に英語を読もうとしたり、書こうとしたりする態度の育成を含めた初歩的な運用能力を養うことが考えられる。
    例)馴染(なじ)みのある定型表現を使って、自分の好きなものや、家族、一日の生活などについて、友達に質問したり、質問に答えたりすることができる。
  • 文構造など、言葉の規則性に関する気付きを意図的に促す指導や、文字の認識、単語への慣れも加えることで、発達段階に応じて、知的好奇心に応えるものとする。現在、中学校での学習内容となっているものとして、例えば、文字や符号の識別は、小学校高学年で扱うことについて検討する。
  • 他教科等と連動した学習内容や言語活動を設定することにより、思考力・判断力・表現力や主体的に学習する態度を身に付けることも重視する。
  • 小学校高学年における指導語彙数は、例えば、「Hi, friends!」を活用したこれまでの成果等を踏まえながら語彙数などを検討し、中学校においてこれらの語彙も含め更なる定着を図ることとする。

(小学校における授業時数)
○ 平成25年12月に文部科学省で取りまとめた「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、小学校中学年に活動型を導入し、コミュニケーション能力の素地を養うため、週1~2コマ程度とすることが示されている。
 また、高学年では教科型とし、初歩的な英語の運用能力を養い、コミュニケーション能力の基礎を養うのに必要な一定時間(年間70単位時間、週2コマ相当)を確保し、モジュール学習(※)も活用しながら、週3コマ程度を確保することが示されている。
(※モジュール学習とは、10分、15分などの時間を単位として取り組む学習形態。)
 一方、授業時数については、現在の小学校の標準授業時数の全体の中で議論すべきとの指摘があった。また、小学校では、朝学習等において、既に多くのモジュール学習等が行われている状況を踏まえた、より詳細な検討が必要との指摘もあった 。
 こうした意見も踏まえ、小学校における外国語の教育に係る授業時数や位置付けなどについては、次期の学習指導要領改訂に向けての審議において、教育課程全体の中で更に専門的に検討することが必要である。

○ また、現行では小学校高学年で外国語活動を週1コマ、中学校では教科の英語を週4コマ行うことになっている。今後、小・中学校の学びをつなげていく必要があるが、その差を高学年においてどのように埋めていくのかということが、教科としての目標・内容を検討する重要な点となるとの指摘があった。

(母語の教育と「ことば」への気付き)
○ 小・中学校の目標は「言語や文化への理解」があるが、日本語の「言語」という語は曖昧で、個別の日本語、英語、スワヒリ語、日本手話など個別の言語を表す場合と、「ことば」一般ということを表す場合の両方がある。英語教育においては、「ことば」という視点を導入することによって、国語との連携、母語の効果的運用のための力を育成、外国語の効果的運用に必要な外国語知識を身に付けるための基盤の形成ができることから、

  • 小学校段階で母語を利用して、「ことば」の仕組みや働きに気付かせること
  • 世界に多くの言語があることを理解させる配慮が必要であること
  • 豊かな「ことば」への気付きは母語と外国語の効果的な運用を可能とすること

が重要であり、「ことば」への関心を高めることが必要であるとの指摘があった。

学校における指導と評価の改善

(1)現状と成果

(指導)
○ 現行の学習指導要領では、小学校高学年に外国語活動を導入し、「聞くこと」及び「話すこと」を中心に指導している。中学校・高等学校では「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の技能を総合的に高める指導を行うこととし、指導語数を増加〔中学校は900語程度から1,200語程度、高等学校は1,300語程度から1,800語程度(「コミュニケーション英語3」までを履修した場合)〕するとともに、教材の題材を充実している。
 また、文法はコミュニケーションを支えるものとしてとらえ、文法事項を言語活動と効果的に関連付けて指導することとなっている。

○ 小学校においては、児童や地域の実態に応じて目標を適切に定め指導計画を作成し、計画的、発展的に授業が行われるよう工夫することが求められている。さらに、外国語活動の指導に当たっては、配慮事項として、体験活動を生かすなど、児童の発達段階や特性等を考慮することが求められている。

○ また、小学校の学習指導要領では、指導計画の作成や授業の実施において、学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が行うこととし、授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実することとなっている。指導に当たり、学級担任を中心として英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングが定着しつつある。

(2)課題

(小学校)
○ 外国語活動への取組が充実してきたものの、地域や学校、教員によりその趣旨の理解や指導方法・体制などに差があるという指摘がある。また、英語母語話者若しくは母語話者レベルの外国語指導助手(ALT)や英語が堪能な外部人材が授業へ参加する回数、それらの質的な確保の状況から、地域や学校によって指導面でのばらつきがある。

○ 小学校高学年は、抽象的な思考力が高まる段階であるにも関わらず、外国語活動の性質上、体系的な学習は行わないため、児童が学習内容に物足りなさを感じていることが指摘されている。また、中学校1年生の7割以上が小学校で「英語の単語・英語の文を読むこと」、8割以上が「英語の単語・文を書くこと」をしておきたかったと回答していることから、小学校・中学校の間で音声から文字への移行が円滑に行われていないとの指摘があった。

○ 小・中連携の観点からは、小学校において中学校での指導を意識した指導が、中学校においては外国語活動を踏まえた指導が不十分である。また、小・中連携の取組の内容は、情報交換が多く、連携の効果が期待される取組を行っている例は少ない。

○ 小・小連携、小・中連携の研修では、「学級担任等による外国語活動の参加・協議」や「外国語活動の在り方に関する共通理解、具体的な活動についての共通理解や体験」などに関する研修を4~5割程度の学校で実施している。一方、「年間指導計画」や「単元計画指導案」の作成、検討などを実施している学校は全体の1~2割弱となっており(※15)、効果的な指導法や指導計画の作成に関する研修機会は十分とはいえない。

(※15 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」)

(3) 指導・評価に関する改善の方向

(小・中・高等学校の共通事項)
○ 指導と学習評価については、外国語における次期学習指導要領の目標・内容の改善に伴い、その特性を踏まえた多様かつ実践的な授業を展開するため、子供たちの多様な実態と発達段階に即した柔軟かつ優れた指導方法や学習評価の方法を確立する必要がある。

○ 指導について、英語学習への動機付けを維持しつつ、児童生徒の学びが小・中・高等学校間で円滑につながるような指導を行うことが必要である。学習評価は、評価によって学習者に学ぶ意欲を喚起し、自信を持たせるとともに、今後の学習に向けた指針として示されることが重要である。学習指導要領に定める目標に準拠した評価では、教員に対し、児童生徒一人一人の学習の確実な定着のために意欲的に取り組めるような授業の計画と、指導の改善を継続的に行うことが教員に求められている。また、そのために評価方法の妥当性・信頼性を担保するための改善・工夫が必要である。

○ 外国語活動・外国語の目標は、1.言語や文化に対する理解を深め、2.積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、3.「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」、「書くこと」などのコミュニケーション能力を養うこととされている。各学校では、学習指導要領の目標・内容に基づき、単元ごとの学習到達目標の設定と、それに沿った指導計画を作成するとともに、前述の1.から3.に沿った効果的な評価を行う必要がある。

○ また、生徒に求められる英語力向上を達成するため、指導計画の作成に当たり、前述の3.の技能部分に係る具体的な学習到達目標はCAN-DO形式で設定する。その際、教科書等の教材、生徒の学習状況、授業時数等を踏まえつつ、それら全体構想を教員間で十分に共有しながら、学校及び学年・科目ごとの学習到達目標を設定し、指導方法や評価方法を工夫・改善する。

○ 学校教育法第30条2項で示されている「主体的に学習に取り組む態度」(※18)を評価するには「関心・意欲・態度」において評価を行うこととされており、学力の重要な要素として評価を行う必要がある。このような観点から、英語教育の評価の観点である「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」について積極的に評価を行い、それらを育んでいくことは重要である。

(※18 中教審教育課程部会報告より「改正教育基本法においては、学校教育において自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視することが示されるとともに、学校教育法及び学習指導要領の改正等により、主体的に学習に取り組む態度が学力の三つの要素の一つとして示されている。また、我が国の児童生徒の学習意欲について課題がある状況を踏まえると、学習評価において、児童生徒が意欲的に取り組めるような授業構成と継続的な授業改善を教師に促していくことの重要性は高い、さらに、主体的に学習に取り組む態度は、それをはぐくむことが基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成につながるとともに、基礎的・基本的な知識・技能の習得や思考力・判断力・表現力等の育成が当該教科の学習に対する積極的な態度につながっていくなど、他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素でもある。」と指摘されている。)

(CAN-DO形式での学習到達目標と学習評価)
○ 観点別学習状況の評価における「関心・意欲・態度」は、独立してあるものではなく、「他の観点に係る資質や能力の定着に密接に関係する重要な要素でもある」とされ、対象となる学習の単元における4つの観点は、単元における学習と一体的に評価が行われる必要がある。

○ このため、「関心・意欲・態度」以外の3つの観点のうち、その単元の最も重視したい観点に示されている評価内容として、例えば、「外国語表現の能力」として「○○できる」とする観点から評価を行う事項を、「関心・意欲・態度」の項目として「外国語を用いて○○しようとしている」と表現を置き換え、その単元において両面から評価を行うなど、生徒自らが主体的に学ぶ意欲や態度などを含めた多面的な評価方法等を検証し、活用することが必要である。

○ 具体的な評価方法としては、筆記テストのみならず、面接、エッセー、スピーチ等のパフォーマンス評価、活動の観察等の効果的な評価方法から、その場面における生徒の学習状況を的確に評価できる方法を選択することが重要である。

○ 小・中・高等学校における効果的な指導及び評価の在り方について、これまでの先行的な取組における成果・課題や、「英語教育強化地域拠点事業」(H26年度~)の状況を検証し、得られた結果を次期学習指導要領の改訂から全面実施に至るまで活用する。その際、評価が学びの改善につながるようなPDCAサイクルの構築を進める。

○ 次のような方向性を踏まえつつ、今後、大学等と連携協力による小・中・高等学校を通じた先進的な指導・評価の取組を、国が積極的に支援する必要がある。

(小学校)
○ 小学校中学年においては、これまでの高学年における外国語活動の実績を踏まえつつ、児童の発達段階に留意した指導内容や活動の設定、他教科等との連携強化を意識した効果的な指導方法等を更に充実・強化していく必要がある。

○ 小学校中学年から外国語教育を開始することを前提として、言語や文化についての体験的理解に加え、英語学習への動機付けを更に高め、コミュニケーション能力の素地を養うとともに、小学校高学年から卒業時までにコミュニケーションへの積極性やコミュニケーション能力の基礎を身に付けさせる指導法等の在り方について検討する。

○ また、高学年においては、児童の英語学習への動機付けを維持しつつ、小学校の学びを中学校へ円滑に接続させるため、小学校と中学校の連携の効果が期待される相互乗り入れの授業、カリキュラムづくりの連携、共通理解を図り相互の効果的な指導計画作成などを行う合同研修などの具体的な小・中連携による指導を更に充実・強化していく必要がある。

○ 小学校段階における評価の在り方については、先行事例における活動型及び教科型の評価の状況を検証するとともに、外国語学習の初期段階であることを踏まえ、中学年、高学年、それぞれの発達段階を踏まえた学習評価の在り方を検討する。小学校中学年では、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成に重点を置いて、これまでの高学年における外国語活動の実績を踏まえつつ、発達段階を踏まえた具体的な学習評価の在り方を検討する。

○ 小学校高学年では、教科として位置付けるに当たり、英語の特性及び高学年の発達段階を踏まえながら、文章記述による評価(※19)や、数値等による評価など適切な評価方法について、学校教育全体の中でのバランスをとる方向で引き続き検討する。

(※19 平成20年中教審答申では、「小学校における外国語活動の目標や内容を踏まえれば一定のまとまりをもって活動を行うことが適当であるが、教科のような数値による評価はなじまないものと考えられる」と指摘された。)

○ なお、高学年においては、 語彙や文法の知識量ではなく、パフォーマンス評価等を通して、

  • 言語や文化に関する気付き、
  • コミュニケーションへの関心や意欲、
  • 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度、
  • 「聞くこと」や「話すこと」などの技能、

について評価することも考えられる。

○ また、中学校における入学者選抜に外国語を課すことは望ましくないとの指摘があった。小学校段階の外国語学習の趣旨を踏まえ、学習者に過度の負担とならないように十分配慮することが必要である。このことは、小学校と中学校の接続を検討する際にも極めて重要である。

○ 小学校高学年の外国語が教科となった場合、中学校における入学者選抜における英語の扱いについて、引き続き慎重な検討が必要であるとの指摘があった。

教科書・教材の充実

(1)現状と課題

(小学校)
○ 小学校における外国語活動においては、国により作成された小学校外国語活動教材例、「Hi, friends!」が希望する約2万校の学校に配布され、地域、学校、学級の実態に合わせて工夫・活用がなされている。また、児童の多くが外国語活動の授業や外国語学習に対して肯定的であり(※22)、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が育成されてきている。

(※22 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」によれば、「外国語活動の授業が好きか」という質問に肯定的な回答を示している5年生の割合は77.0%、6年生の割合は66.5%、両学年平均71.7%。さらに、25年度学力調査・意識調査において同質問に対する肯定的な回答の割合は76%。前調査によると、「英語が使えるようになりたいか」という質問に肯定的な回答をした児童の割合は、91.5%)

○ 中学1年生対象による調査(※23)では、外国語活動の授業で、「もっと学習しておきたかったこと」の回答の割合として、「英語の単語を読むこと」が77.9%、「英語の単語を書くこと」が81.7%、「英文を読むこと」が77.6%、「英文を書くこと」が78.6%であり、音声中心の活動に比べ10ポイントほど高い数値である。小学校の外国語活動で音声中心に学んだことが、中学校での段階で音声から文字への学習に円滑に接続されていないこと、発音と綴(つづ)りの関係の学習や文構造の学習に課題があるなどの指摘があった。

(※23 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」)

○ このような状況を踏まえ、小学校の外国語活動が導入されて一定の成果を上げているものの、中学校での学習への円滑な接続を考えると、小学校高学年段階において、文字の扱いや文構造への気付きなど、中学校との接続を意識した指導に有効な教科書・教材が必要である。

(小・中・高等学校の共通事項)
○ 先進的な取組を行う一部の学校においては、タブレット、PC 、電子黒板、テレビ会議システム等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流学習において児童生徒同士による意見交換、発表などお互いを高め合う学びを通じて、思考力、判断力、表現力などを育成する取組が行われている。

○ 学校におけるICT教育に必要な環境整備と活用は、一部の学校・地域では進んでいるが、全国的に見ると英語教育におけるICTの環境整備と活用は十分と言えないとの指摘があった。英語教育の充実・強化に当たり、これらの充実を各自治体や学校、教員に促す必要がある。

(2)教科書・教材に関する改善の方向

(小学校)
○ 先進的な取組も含めたこれまでの外国語活動の成果・課題を踏まえ、小学校中学年では、発達段階に応じた外国語活動に必要な教材の開発を行う。小学校高学年では、英語の教科化に伴って教科書の整備が必要となる。また、教科化され、教科書が整備されるまでの間、国において、中学校との円滑な接続を意識した補助教材、及び新たな教材を作成する。

○ 補助教材については、アルファベット文字の認識、日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴、文構造への気付きを促す指導ができるようなものとし、高学年における英語の教科化において求められる教材等として、国の「英語教育強化地域拠点事業」における研究開発校等において、平成27年度より試行的に活用しながら、その効果を検証する。さらに、その検証結果を、小学校高学年の英語の教科化に向け、新学習指導要領移行期に各学校において活用することを想定した新たな教材開発に生かすものとする。

(小・中・高等学校に共通する事項)
○ 小・中・高等学校の外国語学習においては、効果的な学習方法として、先進的な学習教材の活用事例の共有、発信を行う。さらに、音声も含めた学習効果の高いコンテンツの導入、個別学習や協働学習(※24)などの学習活動に応じた多様な教材や、ICT活用を推進するためのハードウェアの充実を促進する。

(※24 「学びのイノベーション事業」実証研究報告書(平成26年4月11日:学びのイノベーション推進協議会)では、「「個別学習」では、デジタル教材などの活用により、自らの疑問について深く調べることや、自分に合った進度で学習することが容易となる。また、一人一人の学習履歴を把握することにより、個々の理解や関心の程度に応じた学びを構築することが可能。」、「「協働学習」では、タブレットPC 、電子黒板等を活用し、教室内の授業や他地域・海外の学校との交流学習において子供同士による意見交換、発表などお互いを高め合う学びを通じて、思考力、判断力、表現力などを育成することが可能となる。」とまとめている。)

○ 教育の情報化の推進については、学校における情報機器等の安定的かつ計画的な整備を促進するため、第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日閣議決定)で目標とされている水準の達成に必要な所要額(平成26年度から4か年にわたり総額6,712億円)を計上した「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26年度~平成29年度)」に基づき、地方財政措置を講じることとしている。これを十分に周知し、英語教育を含むICT活用に必要な環境整備、学習用ソフトウエア、ICT支援員の活用について、地方公共団体における予算措置を促進する。

○ 今後、国において「デジタル教科書・教材」の導入に向けた検討(※25)を行う。その際、デジタル教科書・教材が導入される際は、検定の対象となる教科書には音声や映像データが含まれるという考え方を明確にする必要がある。

 (参考) 「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」による学校のICT環境の整備
 ・教育用コンピュータ、電子黒板、無線LAN等の整備
 ・学習ソフトの整備
 ・ICT支援員の配置等 

 (※25 政府の世界最先端IT国家創造宣言(平成25年6月14日IT総合戦略本部、平成26年6月24日全部改定)工程表において、「「デジタル教科書・教材」の導入に向けた検討」、「「デジタル教科書・教材」の導入・普及促進に向けた環境整備」を行うこととされている。)

学校における指導体制の充実

(1)現状と成果

(小学校)
○ 小学校では、学習指導要領において、

  • 指導計画の作成と授業の実施については、学級担任の教員又は外国語活動を担当する教員が行うこととし、
  • 授業の実施に当たっては、英語母語話者や英語が堪能な地域人材の活用に努めるとともに、地域の実態に応じて外国語に堪能な地域の人々の協力を得る

など、指導体制を充実することとされている。

○ 平成23年度に小学校高学年に外国語活動が導入されて以降、多くの学校で学級担任とALTなど英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングによる指導体制の整備・充実が図られてきた。
 小学校の教員は、その養成課程で外国語教育に必要な指導法等に係る養成を必ずしも経ていないが、現職研修等で外国語活動の授業づくりの習得に努め、工夫を重ねながら特色ある教育活動を行って成果をあげてきた。

○ ALT等の外部専門人材は、現在1万2,000人(うちJET(※26)が4,000人であり、また、自治体の直接任用、労働者派遣契約によるもの及び請負契約によるものなどを合計すると約8,000人)となり増加傾向にある。

(※26 JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)では、平成26年度までに6万人を超える外国青年が、外国語指導助手(ALT)、国際交流員(CIR)やスポーツ国際交流員(SEA)として職務に従事。我が国の「内なる国際化」の進展に寄与。)

○ 教員とALTの連携による取組としてふるさと教材の開発や、外国語以外の教科でもALTを活用する取組も見られる。

【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」】
・すべての英語の授業のうち小学校の58%、中学校の21%、高等学校の8%において
 ALTが活用されている。
・小学校ではALTとのティーム・ティーチングが増加。 

(2) 課題

○ 小学校では、授業準備等の時間確保、教員の指導力、学級担任とALT等の外部人材との打合せの時間確保、小・中の連携の具体的な工夫などが課題として指摘されている(※27)。

(※27 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」)

○ ALTについては、地域や学校、教員によりその取組に差があり、補助的立場にあるALTに指導を任せてしまうという例がある。ALTの労務管理上、一部に学級担任等とALTとがティーム・ティーチングできない状況もある。
 また、ALTの指導力の質向上や、JET-ALTへの生活支援の充実、地方自治体における財政負担、活用状況の地域間格差(半年に1回程度しか訪問がない学校も)がある。

【ALTに関して指摘される課題】
・教員とALTの打合せや研修時間の確保
・ALTの指導力の質向上
・地方自治体における財政負担
・JET-ALTへの生活支援の充実 

○ 小学校高学年の英語教育が教科化される場合、より専門性の高い教科指導を行う指導者の養成・採用が必要である。一方で、現状は、小学校で専科指導を行っている学校の割合は低く(※28)、小学校教員で中学校外国語科の免許状を有する者は約4%という状況で、必ずしも外国語教育に関わっていない。

(※28 文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査(H25)」より、5年生は5.8%、6年生は6.2%)

○ これまでの小学校の学級担任を中心とした外国語活動における成果を十分に認識しながら、小学校における指導体制の在り方を検討するとともに、次期学習指導要領の改訂と並行して準備段階における専科指導者の養成・確保への支援が急務である。

(小・中・高等学校に共通する課題)
○ 小・中・高等学校の教員の多くは指導力を向上させたいと感じているが、地域における研修機会が少ない、多忙により参加できないといった状況がある(※29)。

(※29 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」より、小学校では、学校の状況が「十分でない」又は「どちらかといえば十分でない」項目として、「準備等の時間確保」、「教員の指導力」、「小・中の連携」等を挙げる教員が多い(それぞれ80%、58%、74%)。文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)」より、中学校の英語担当教員に対する集中的な研修の実施状況は、都道府県主催47.8%、市町村主催8.4%)

○ これまでの各学校での取組は、各英語担当教員個人の指導に任され学校全体でチームを組んで取り組むことが少なく、生徒指導、部活動などの対応もあることから、学校内外で教材研究や研修を行う時間の確保や、それら成果の共有ができない状況にあるとの指摘があった。また、国や地方公共団体の指定校の研究成果や、大学等との連携による質の高い養成・研修等に関する情報が蓄積されておらず、それらの効果的な活用がなされていないとの指摘もあった。

○ このような状況を踏まえ、子供たちが外国語を通じて積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するため、学校内における教員や外部専門人材がそれぞれ専門性を連携して発揮し、学校組織全体で一つのチームとして力を発揮することが重要である。また、大学や外部専門機関との連携により、英語担当教員の養成・研修を改善・充実することが必要である。 

○ 英語担当教員及び英語が多能なALT等の外部専門人材の配置や、地域における指導体制について、地域間、学校間における差があるため、必要な支援体制として、地域の英語教育を推進する指導者の確保、教育委員会と学校間の連携による効果的な養成・研修の実施、英語の外部専門人材の活用など、地域における戦略的な指導体制の強化が必要である。 

(3)指導体制に関する改善の方向

小・中・高等学校に共通する指導体制

(地域・学校における指導体制)
○ 各学校においては、校長の方針や各教員の取組によって意識や取組の差があることが指摘された。各学校においては、英語教育を担当教員任せにせず、校長がリーダーシップを発揮し、学校全体の取組方針を明確にした上で、全教員の共通理解を図りながら、中核教員を中心とした校内の英語教育に係る指導体制の強化に取り組むことが重要である。また、指導体制の強化においては、1.効果的な教材開発とともに、2.生徒のコミュニケーション能力を総合的に育成することができる指導者の確保を含めた充実が必要である。

○ 地方自治体においては、各学校における英語教育充実のため、学校や地域全体で取り組むことが必要である。例えば、市町村単位で、地域の指導的立場にある教員が複数の小・中学校を受け持ち、英語教育担当指導主事や外部専門家等とチームを組んで指導に当たるなど、地域の実情に応じた柔軟かつ効果的な指導を行う体制づくりが期待される。

○ また、優れた指導力を有する教員を、地域の研修講師や小・中学校の接続を前提とした専科指導等が可能となる「英語教育推進リーダー」として養成する。

○ このような体制の中で、小・中・高等学校の一貫した英語教育や、小学校の英語教育の専門性の向上等を推進することが期待される。
 具体的には、「英語教育推進リーダー」と英語教育担当指導主事等が中心となって、小・中・高等学校の連携による研修や、教員委員会と大学・外部専門機関との連携による研修などを実施するとともに、各学校を訪問し、指導計画の作成やCAN-DO形式での学習到達目標を活用した授業改善などについて指導・助言を行うことなどが期待される。

○ 国や地方公共団体の指定校の研究成果や優れた先進的な取組、各地方公共団体において目標設定・評価を行う取組、大学等との連携による養成・研修等の全体の成果・効果、課題を調査・分析し、域内の研修や各学校への指導・助言に生かすことが必要である。

※平成26年度より、各都道府県教育委員会において掲げられている目標設定(例)
毎年フォローアップが行われる予定
・資格・試験活用による英語力向上(教員・生徒)  
・学習到達目標(CAN-DO形式)策定状況        
・パフォーマンス評価実施状況 
・生徒の英語による言語活動時間の割合
・教員の授業での英語使用の割合                  
・学校の指導体制の整備 (域内・校内研修体制、担当教科主任の配置など) 

(小学校)
○ 小学校の外国語活動において、ALTや外国語が堪能な地域人材とのティーム・ティーチングを行いながら、その発達段階に応じて児童の実態を把握し、指導に生かすことができる学級担任が果たしてきた役割は重要である。

○ 小学校中学年へ外国語活動を導入する場合は、地域の実情を踏まえ、学級担任とALTや専科指導を行う教員、学級担任と英語が堪能な外部人材とのティーム・ティーチングを行うなど柔軟な指導体制が整備されることが必要である。

○ また、小学校高学年における英語の教科化においては、英語の指導力を備えた学級担任や、専科指導を行う教員を含めた、より専門性を重視した指導体制について検討する必要がある。
 小学校の学級担任の役割として、指導計画立案、教材準備、授業における児童への働きかけ、評価などが求められる。英語教育の専門性を重視した体制として、1.担任を持ちながら高学年の教科担任として複数学級の専科指導を行う教員が授業を実施(その場合、他の教科の教員と専門性が求められる授業を持ち合いで対応)、2.担任を持たず高学年の専科指導を行う教員が学級担任と連携しながら授業を実施する事例(※30)が少なからず見られる。

(※30 小学校英語を教科として導入し英語力を向上した韓国では、小学校で学級担任が専科指導を行う教員と、専科指導のみを行う教員を配置する指導体制となっている、導入時に全員120時間以上の研修を受講することが求められるなど教員の英語力・指導力向上が進められてきた。)

○ 次期学習指導要領の改訂においては、このようなケースを想定した指導体制も視野に指導者の養成・研修・採用による充実が必要である。
 また、小学校の指導者は、次期学習指導要領改訂も見据えた中長期的な観点から指導者の指導力向上が必要であり、国の教員養成全体の審議の中で検討が行われる必要がある。
 当面は、高学年において英語が教科化となる場合は、小学校において専門性を持ち教科指導に当たる英語力・指導力のある人材を養成するとともに、現職研修の充実、採用における取組の改善などを進め、総合的に確保することが重要である。

○ これらの指摘を踏まえ、小学校高学年における英語指導に求められる指導体制を強化するため、求められる教員と外部人材の資質・能力・資格要件などについて、次のような観点から具体的な指導体制の改善を進めることが必要である。

  • 児童への指導に当たっては、英語教育に関する専門性を前提としながらも、児童理解の観点、他教科等と連動した学習内容・活動を行う観点から、学級経営を基盤とした授業の実施等に対応できる指導者が求められる。
  • 今後も小学校では、児童の実態をよく知る学級担任が重要な役割を果たすこととなるが、高学年の教科を指導する場合、将来的に学級担任が英語の指導力に関する専門性を高めて指導する、併せて専科指導を行う教員を活用することにより、専門性を一層重視した指導体制を構築する。
  • 外国語活動において役割を果たしてきた学級担任の中で、更に小学校高学年の専科指導にも当たることができるようにするため、「免許法認定講習」の開設支援等を行う。例えば、小学校の現職教員が、中学校の免許状を取得し、初歩的な文字指導から小・中連携に留意した指導計画の作成を行うことなどが可能となる専科指導が可能となる環境を整備する。
  • 小学校高学年における英語の教科化に当たっては、専門性を有する適切な人材に特別免許状を積極的に授与し活用することや、英語が堪能な地域人材、英語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用するための方策も講じる。
  • 加えて、外国語講師や、補助的な役割を果たす外国語指導助手(ALT)、英語が堪能な地域人材等の活用など、地域の実情に応じた指導体制を充実させることが重要である。
  • 小学校における外国語活動では、外国語を使った活動を通じて、人とコミュニケーションを図る大切さや楽しさを体験し、国際理解を図り、視野を広げることを目的として、ALT等の外部人材の活用などによる指導体制の充実を図る。
  • 小学校における学級担任と外部人材の連携については、それぞれの役割を明確にしつつ、適切かつ適正なティーム・ティーチング等が行われるための体制整備の充実を図る。

(例)
・学級担任、外部人材に求められる役割の明確化、連携の在り方
・外部人材として、外国語指導助手(ALT)、英語が堪能な地域人材などの活用促進方策(配置拡大、ガイドラインの策定等)
・ALT等向けの研修強化・充実   等 

○ 小学校段階では、積極的に外国語を聞いたり話したりすることを重視する必要があり、専門性の高い教員との連携、外部人材やICTの活用を通じて指導の充実を図っていくことが重要である。

教員の養成・採用

ア.現状・成果

○ 小学校に外国語活動が導入されて以降、その特性から、小学校の免許状に関し、英語教育指導法は必須となっていない。

○ 中学・高等学校の免許状に関し、大学の教職課程では「教科に関する科目」として、英語学、英米文学、英語コミュニケーション、異文化理解が柱となっているが、生徒のコミュニケーション能力育成に必要な指導力を向上するための改善をすべきとの指摘がある。

○ 公立学校における教員採用に関し、英語(英会話)の実技試験は、中学校で66県市、高等学校で55県市が実施している。資格・検定試験の結果により、採用試験の一部が免除される県市は17県市となっている。
 国は、教育委員会に対し、高度な英語力と指導力を有する者の採用を促している。

イ.課題

○ 小学校高学年の英語を教科化するに当たり、より専門性の高い教科指導を行う指導者の養成が必要である。

○ 中学校では、高等学校における言語活動の高度化及び高等学校に円滑に接続することを前提として、基礎的な言語活動に対応できる指導力や英語力をもった教員の養成・採用が課題となっている。

【文部科学省「英語教育実施状況調査(H25)】
・公立学校の英語担当教員の英語力について、英検準1級以上、TOEFL iBTスコア80以上又はTOEICスコア730以上の者の割合は、全国平均で、中学校で28%、高等学校で53%となっている。
・高等学校の「コミュニケーション英語1」の授業で「発話の半分以上を英語で行っている」教員は53%となっている。
・これらの状況について、都道府県間で違いが大きい。 

○ 英語担当教員の養成を通じて、英語力に関し、4技能を通じて高いコミュニケーション能力と指導力が修得されるよう、教職課程の質を一層向上させる必要がある。

○ 小・中・高等学校を通じた英語教育改革の実施に当たっては、指導者としての教員の資質能力を向上させる観点から、教職課程を見直す必要がある。

○ あわせて、教員採用においても英語力・指導力の高い者を採用する必要がある。

ウ.改善の方向

(小学校)
○ 教職課程では、小学校中学年から外国語活動を導入するに当たり、その目的、目標、指導法、授業実践、教材開発・活用法、教室英語の活用などに加え、児童の発達、他教科等での学習内容、学級経営等についての知識理解等を取り扱う必要がある。

○ さらに、小学校高学年の英語を教科化するに当たり、小学校段階で系統的な指導を行うため、児童の発達段階に応じた、英語を「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4つの技能にわたる総合的なコミュニケーション能力を身に付けるための英語の指導力を高める内容が求められる。そこで、教職課程において英語指導法に関する科目を履修させることについて検討が必要である。その際、学習指導要領の内容を踏まえた指導計画の作成、模擬授業、教材研究、効果的な評価方法などの内容を含むことが必要である。

○ 具体的には、例えば、小学校における英語指導に必要な、基本的な英語音声学、第二言語習得、実際の場面で使うことができる語彙、表現、文構造、文法の特徴に関する理解と運用、異文化理解、発達段階に応じた適切な指導法、小学校における教室英語など教職課程において実践的な内容を扱う必要がある。

○ あわせて、実践的な指導力を身に付けるため、ALT等とのティーム・ティーチングを含む模擬授業、小・中連携に対応した演習や事例研究などが取り扱われることが必要である。

[小学校「各教科の指導法における英語」に関する科目のイメージ(例)]
・我が国及び、小学校段階における外国語教育の現状・意義・課題
・教室英語等の運用
・児童の発達段階に応じた指導、音声や単語に慣れ親しんだり、日本語と英語の文構造の違いに気付いたりする等の指導などを含めた指導計画の作成(外国語活動や中学校外国語との接続等を含む)
・教材開発、教科書・教材の効果的な活用に関する研究
・語彙、表現の指導
・児童のALT等とのティーム・ティーチングなどの模擬授業、授業観察
・発達段階に応じた4技能の能力を適切に測ることができる評価方法(「話すこと」や「書くこと」の能力を測るためのパフォーマンステスト等の在り方を含む) 

(小・中・高等学校で共通する事項)
○ 教員養成については、より効果的な英語担当教員養成カリキュラムの開発が必要である。例えば、小・中・高等学校、大学、地域社会が連携して小・中・高等学校で既に優れた実践をしている英語担当教員が大学で授業を持ち、新たなカリキュラム開発に参加するなどの取組を支援する。

○ 次期学習指導要領の改訂に向けて、小学校における外国語の教科化、及び中・高等学校における言語活動の高度化などに対応した「教職に関する科目」、「教科に関する科目」の在り方について調査・研究を行い、各大学等におけるカリキュラムの見直しに当たり、活用することを奨励する。さらに、これらについては、今後の中央教育審議会における教員養成の見直しの審議全体の中で検討を行う。

(採用)
○ 英語担当教員の採用に当たり、高い英語力と併せて英語による指導力を評価する実技試験や面接等の取組が進められることが期待される。

○ また、養成段階における取組にあわせ、英語力の高い教員を採用するため、採用段階においても、英検準一級、TOEFL iBTスコア80程度以上の者を採用するような取組が期待される。

○ 今後の小学校では、英語教育の方向性を踏まえ、当面、前述のように学級担任が専科指導を行ったり、高学年の専科指導を行う教員が学級担任と連携しながら授業を実施したりする指導体制が想定されるが、専科指導を想定した小学校教員の採用選考に当たっては、採用段階における英語力の基準を設定することや、海外留学の経験、面接試験、模擬授業などによる実技試験等によってコミュニケーション能力などの専門性を考慮した採用(※33)の実施を奨励する。

(※33 英語の資格による試験免除の実施状況17市県、採用時の外国語活動の実技試験実施状況20市県)

教員研修

ア.現状と成果

○ 将来の小学校における外国語教育の充実や、中・高等学校における英語教育の高度化に向けて、平成26年度から、国において、外部専門機関と連携して研修を実施している。また、自治体における研修への補助も開始した。

○ この研修参加者について、多くの教員の英語力が向上し、「これからの授業を英語で実施したい」と考える教員が大幅に増加している。

【英語教育推進リーダー中央研修に参加した小学校教員へのアンケート(H26)】
・研修前の状況:授業をほぼ英語で実施していた者18%、授業の半分を英語で実施していた者63%
・研修後の考え方:授業をほぼ英語で実施したいと考える者60%、半分は英語で実施したい38%

イ.課題

○ 優れた教員ほど多忙であり、研修への参加や他の教員への指導に集中できないとの声が多い。また、小・中・高等学校の教員の多くは指導力を向上させたいと感じているが、地域における研修機会は十分とは言えず、教育委員会と大学・外部専門機関との連携が十分と言えない(※34)など、更なる充実を図る余地があると考えられる。
 今後、現職の教員は、これまえで受けてきた英語教育とは大きく異なる指導法や評価を行うことが求められ、それらに対応できる研修を行う必要がある。

【「英語教育実施状況調査(H25)」】
・都道府県・指定都市が主催した中学校の英語担当教員に対する研修の実施状況は国内研修が47.8%、海外研修が6.0%。高等学校の英語担当教員に対する研修の実施状況は、国内研修を実施した教育委員会が56.7%、海外研修が11.9%

(※34 文部科学省「小学校外国語活動実施状況調査(H24)」)

○ 教員の英語の指導力向上のためには、教職課程の見直しを進めるとともに、現職教員についても、適切に英語力・指導力を向上し、英語によるコミュニケーション活動を行うことができるよう、絶えず学び続けることが大切であり、現職教員の研修を大胆に進めることが重要である。

ウ.改善の方向

○ 教員の英語力・指導力の向上のためには、小・中・高等学校を通じた新たな英語教育に向けて、その養成段階から見直すことが重要であるが、併せて現職教員の研修も充実すべきである。そのため次期の学習指導要領改訂に向けて、教員の意識改革を進めるとともに、新たな英語教育に対応した研修を確実に実施することが必要である。その際、ICTも活用しながら、効果的な研修を工夫することが不可欠である。

○ 現職研修の充実に当たっては、教育委員会と大学・外部専門機関等との連携を図る体制を構築し、継続的な現職研修や養成カリキュラムの開発・実施につなげていくことが必要である。
 その際、例えば、現職の小学校教員が、初歩的な文字指導、英語によるコミュニケーション活動、小・中連携に留意した指導などが可能となり、外国語の教科指導に自信を持って当たることができるよう「免許法認定講習」の開設支援等を行い、中学校外国語等の免許状取得が促進される環境を整備することも重要である。

○ 平成26年度から開始した国による「英語教育推進リーダー」研修を受講した教員を中心に、次期学習指導要領の改訂に向けた域内研修の体制を充実し、研修成果を確実に波及させることで、域内教員の英語力・指導力を向上させる。

【教員を対象とする研修等の例】
・国における「英語教育推進リーダー」中央研修(外部専門機関と連携した英語指導力向上事業)
・各地域・学校において、「英語教育推進リーダー」中央研修の受講者が中心となって中核教員対象に行う研修
・免許法認定講習 

○ 外部専門機関との連携による域内研修は自治体と連携して夏休み等に集中して行う研修に位置付け、実践的な指導を行うため協力校における公開授業や研究会の実施などを含めた域内の研修システムづくりが重要である。

○ 国・地方公共団体による地域の教員研修のシステムづくりに当たっては、地域の中心となる「英語教育推進リーダー」の養成とともに、そうした者が地域の研修の企画・運営に参加することが可能となるよう、後補充の定数措置や非常勤講師等外部専門人材の活用を充実する。その際、研修の質の改善のため更なる取組を支援する。

【研修の質の向上のため、今後更なる取組が必要となる事項】
・実践力を高めるためのワークショップ等の手法
・研修の事前・事後の自己評価方法の開発
・資格・検定試験の活用など英語力の達成状況の検証 

○ 研修に参加する教員の研修効果が高まるよう、その目的・趣旨等の周知徹底を図る。併せて教員の負担軽減を図るため、研修期間を夏休み等に集中して行うことや、単位制にするなど、教員が研修に参加しやすい環境整備が必要である。

○ 授業において、ICTを効果的に活用するためには、教員の指導力の向上が必要である。ICTを用いた指導方法についての研修の充実を図るため、授業の展開を明確にイメージできるような映像等を用いた指導事例の作成や研修教材・研修マニュアルを作成し、普及を図る。

○ また、教育委員会と大学が連携した研修内容を「免許法認定講習」や「免許状更新講習」(※35)へ位置付けていくことを奨励する。

(※35 「教員免許更新制度の改善について(報告)」(平成26年3月18日:教員免許更新制度の改善に係る検討会議)。)

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